WordPressの引き継ぎは、管理画面のIDとパスワードを渡すだけでは完了しません。 サイト所有者、WordPressユーザー、サーバー、ドメイン、DNS、メール、計測ツール、有料契約、定期作業、緊急時の連絡先を整理し、受け手自身がログイン・更新・復旧判断までできる状態にします。
この記事は、社内担当者の変更、退職、制作会社から自社への返却、保守会社の交代で使える実務チェックリストです。サーバー移転や解約は扱わず、「今の環境を安全に受け渡すこと」に絞ります。
引き継ぎ完了の判定
次の5条件をすべて満たしたら完了です。
- 受け手が自分のアカウントでWordPressと契約管理画面へログインできる
- 支払者・契約名義・更新期限・通知先を受け手が確認できる
- 記事修正、画像追加、プラグイン更新など担当範囲の操作を再現できる
- 定期作業と障害時の連絡順を説明できる
- 不要になった旧担当者のアクセスを停止し、共有パスワードを更新できる
最初に作る引き継ぎ台帳
| 管理対象 | 記録する内容 | 確認者 |
|---|---|---|
| WordPress | 管理URL、利用者名、権限、管理者メール | 受け手 |
| サーバー | サービス名、契約ID、名義、更新期限、支払方法 | 契約責任者 |
| ドメイン | 管理会社、登録者、更新期限、自動更新、移管ロック | 契約責任者 |
| DNS | ネームサーバー、主要レコード、変更権限 | 技術担当 |
| メール | アドレス一覧、転送、容量、退職者アカウント | 業務責任者 |
| 外部サービス | 解析、Search Console、広告、フォーム、SNS連携 | 各サービス所有者 |
| 有料契約 | テーマ、プラグイン、素材、CDN、保守契約 | 支払者 |
台帳へパスワードそのものを平文で並べるのは避けます。保管場所、受け渡し方法、更新担当者を記録し、パスワード管理ツールなど権限を取り消せる方法で共有します。
WordPressの利用者一覧を見たら、知らない管理者名がいくつか残っていました。
すぐ削除したくなりましたが、その人が連携サービスに使われていたら困りますよね。
気づけたのは大事だよ。削除前に最終ログインの手掛かり、所有コンテンツ、API連携、担当者を照合しよう。
管理者は全員同じことができると思っていました。
記事を書く人まで管理者にしなくてよいと分かって少し安心しましたが、権限を下げて支障が出ないかは心配です。
まず受け手用アカウントで必要な仕事を試そう。投稿だけなら編集者や投稿者を検討し、設定変更が必要な人だけ管理者にするといいよ。
WordPressユーザーを引き継ぐ手順
- 「ユーザー」→「ユーザー一覧」を開く
- 各ユーザーの氏名、メール、権限、担当業務を台帳と照合する
- 受け手専用のユーザーを作り、必要最小限の権限を選ぶ
- 受け手のメールに届く案内から、本人がパスワードを設定する
- 受け手アカウントでログインし、担当操作を一度実行する
- 旧担当者が所有する投稿の移管先を決める
- 引き継ぎ承認後に旧アカウントを削除または権限変更する
権限を決める目安
- 管理者: テーマ、プラグイン、ユーザー、設定まで管理する責任者
- 編集者: 他の利用者を含む記事・固定ページを管理する編集責任者
- 投稿者: 自分の記事を作成・公開する担当者
- 寄稿者: 自分の記事を作成するが公開承認が必要な担当者
- 購読者: プロフィール管理が中心の利用者
WordPress公式には6つの既定権限があります。マルチサイトでは特権管理者の扱いが異なるため、単一サイトと同じ判断をしません。
サーバーとドメインは「ログイン」より所有状態を見る
制作会社の共有アカウントへ入れるだけでは、契約名義や支払方法を変更できない場合があります。契約管理画面で次を確認します。
- 契約者名と会社名
- 登録メールアドレスと電話番号
- 次回更新日と自動更新の状態
- 支払方法の末尾情報と請求書の送付先
- ドメインの登録者情報、更新期限、移管ロック
- サーバー障害・更新失敗・請求の通知先
成功状態: 受け手側で契約期限と通知を確認でき、前担当者だけのメールアドレスや決済手段に依存していません。
DNSとメールを別項目にする理由
Webサイトが同じサーバーにあっても、DNSとメールは別会社の場合があります。ネームサーバーだけを書き換えると、メール配送や所有権確認用TXTレコードが失われることがあります。
| 記録 | 例 | 用途 |
|---|---|---|
| NS | 現在指定しているネームサーバー | DNS管理先 |
| A・AAAA | Webサーバーの宛先 | サイト表示 |
| CNAME | サブドメインの別名 | サービス連携 |
| MX | メール受信先 | メール配送 |
| TXT | SPF、DKIM、所有権確認 | 認証・迷惑メール対策 |
引き継ぎ中は変更せず、現状値と管理画面の場所を記録します。変更が必要な場合は別作業として実施し、引き継ぎ確認と同時に行いません。
ドメイン管理画面の連絡先を変えようとしたら、認証メールが前の担当者さんへ届く表示でした。
私のメールへ先に変えてしまっても大丈夫なのか、止まってしまいました。
その場で確定せず止まれたのは正解だよ。旧連絡先で承認が必要か確認し、前担当者が対応できる時間に一緒に変更しよう。
DNSのTXTには長い文字列が並んでいて、不要なものに見えました。
でもGoogleの確認やメール認証に使うなら、意味が分からないまま消さないほうがよいですね。
そうだね。名称、値、利用サービスを一行ずつ記録して、サービス側でも使っていないと確認できたものだけを後日整理しよう。
有料テーマ・プラグイン・外部連携を確認する
- 購入者アカウントと利用許諾
- ライセンスキーを表示できる場所
- 更新期限と自動更新
- 一サイト限定・複数サイト可などの条件
- フォーム通知先と自動返信
- バックアップ保存先
- アクセス解析・Search Consoleの所有者
- SNS自動投稿、予約、広告タグ
- API用アプリケーションパスワード
WordPressのアプリケーションパスワードは、外部ツールごとに作成・取り消しできる認証情報です。主パスワードを外部ツールへ渡す代わりに使えます。担当交代では不要なものを個別に取り消し、新担当者や新しい連携用に作り直します。
定期作業をカレンダーへ移す
| 頻度 | 作業例 | 完了証拠 |
|---|---|---|
| 毎日 | 問い合わせ、公開失敗、監視通知 | 対応記録 |
| 毎週 | 更新候補、リンク切れ、コメント | 確認日 |
| 毎月 | アクセス、検索流入、契約容量 | 月次メモ |
| 更新前 | 互換性、変更点、戻し方 | 作業票 |
| 年次 | 契約更新、権限棚卸し、ポリシー | 承認記録 |
「定期的に確認する」では引き継げません。実施日、担当者、確認画面、異常の判断基準、異常時の連絡先まで決めます。
引き継ぎ当日の操作テスト
- 受け手が自分のWordPressアカウントでログインする
- 下書きを作り、画像を一枚追加してプレビューする
- 担当権限で必要な設定画面が開けるか確認する
- サーバー・ドメイン・解析ツールへ本人のアカウントで入る
- 契約期限、通知先、請求情報を読み上げて照合する
- 問い合わせ通知をテスト送信する
- 緊急連絡先へ連絡できるか確認する
- テスト用下書きと通知を片付ける
旧担当者の権限を閉じる順番
- 受け手のログインと操作テストを完了する
- 所有コンテンツと外部連携を移す
- 共有パスワードを個別アカウントへ置き換える
- アプリケーションパスワードとAPIキーを棚卸しする
- 旧担当者のWordPress・サーバー・解析権限を停止する
- 登録メール・二段階認証・復旧手段を受け手側へ更新する
- 停止後にもう一度ログインと通知を確認する
パスワード変更だけでは、ログイン済みセッション、APIキー、共有メール、外部サービスの権限が残る場合があります。サービスごとにアクセス経路を閉じます。
管理しやすいサーバーへ変える必要がある場合
現在の契約を受け手名義へ変更でき、必要な権限と通知を移せるなら、引き継ぎだけを理由に移転する必要はありません。制作会社の共用契約から分離する必要がある、契約所有者を変更できない、ログや復元機能が不足する場合に新環境を比較します。
以下の3社はWordPress・ドメイン・契約管理の確認画面を持つ候補です。移転を決める前に、既存ドメイン・メール・有料ライセンスを誰が所有しているか確定してください。
公式資料
よくある質問
管理者のIDとパスワードを共有すれば十分ですか?
十分ではありません。本人用アカウントを作り、必要な権限を割り当て、共有パスワードへの依存をなくします。
旧担当者のアカウントはいつ削除しますか?
受け手のログイン・操作テスト、投稿所有者の移管、外部連携の確認後です。先に削除すると確認や復旧が難しくなります。
引き継ぎ時にサーバー移転も同時に行うべきですか?
同時に行うと問題の原因を分けにくくなります。所有・権限・連絡先の引き継ぎを完了してから、必要性を判断します。
最初はログインできたら終わりだと思っていました。
今は、私のアカウントで更新と通知確認までできて、前の担当者さんの権限を閉じられたら完了だと分かりました。
受け取る物ではなく、受け手が続けられる状態を見られるようになったね。そこまで確かめれば、担当が変わってもサイトは迷子にならないよ。
有料契約やDNSはまだ少し難しいので、分からない値を消さず、利用サービスと一緒に残します。
次の更新日までに誰が確認するかも、カレンダーへ入れておきたいです。
それで大丈夫だよ。分からないものを勝手に片付けず、所有者と役割を確かめる。それが一番安全な引き継ぎだよ。
まとめ:受け手が自分の権限で運用できれば完了
WordPressの引き継ぎでは、管理画面、サーバー、ドメイン、DNS、メール、外部サービス、有料契約、定期作業を台帳へまとめます。受け手用アカウントで操作テストを行い、所有コンテンツと連携を移してから旧担当者のアクセスを停止してください。
本記事は2026年7月31日時点のWordPress公式情報を基にしています。契約名義変更やライセンス移管は各サービスの最新規約を確認してください。広告・PRを含みます。